糖尿病および肥満症の食事療法
糖尿病・肥満症の食事療法とは
糖尿病や肥満症の食事療法の基本は「過食を避け、偏食せず、毎日規則正しく食べる」 ということであり、何も特別なものではありません。ですから、この食事療法は常識食・健康食といえるものであり、患者さんだけでなくご家族全員で行っていただくと良いと思います。
食事療法の原則
1 エネルギー量を適切に
食べ過ぎは直接血糖を上昇させ、また体重を増加させる原因になります。一方、食べるエネルギー量が少なすぎると、異常に体重が減少したり、また子供さんでは成長が不十分になってしまいます。このようなことを防ぐため、一人一人の年齢、体格、運動量などにみあった適切な量のエネルギー(カロリー)を食べ物として取るようにしましょう。
1日に必要なエネルギー(カロリー)量は?
成人の場合 1日のエネルギー量 = 標準体重 x 運動量
標準体重(キログラム)=身長(メートル)x身長(メートル)x22
運動量の目安(体重1キログラム当たり)
軽労働 | 25〜30キロカロリー |
中労働 | 30〜35キロカロリー |
重労働 | 35キロカロリー以上 |
2 バランス良く栄養素を取る
糖質(炭水化物)、蛋白質、脂肪、ミネラル、ビタミンなどをかたよらないように取ることで健康が増進します。個々の食べ物で絶対とってはいけないもの、また逆に特にたくさん取るとよいものはほとんどありません。なるべく多くの食品をバランス良く取るように心がけましょう。
糖尿病・肥満症の人は高血圧になりやすいので食塩は控え目にしましょう(1日10グラム以下)。
また、高脂血症にもなりやすいのでコレステロールや飽和脂肪酸(動物性脂肪など)も取りすぎないようにしたいものです。
食後の血糖上昇を防ぎ、コレステロールの増加を防ぎまた便通を良くする働きのある食物繊維を十分取るようにしましょう。
3 食事を規則正しく取りましょう
ながら食い、まとめ食いは食べ過ぎのもとになります。また、インスリン注射をしているあるいは血糖降下薬を内服している患者さんは、特に食事の時間と量を規則正しく取り、食事とこれらの薬の働きがうまくあうようにしましょう。
食品交換表 (日本糖尿病学会編/日本糖尿病協会・文光堂発行)
食品についての専門知識がなくても糖尿病・肥満症の食事療法を行いやすくするために、食品交換表というものが作られています。
この表ではバランス良く食べるために食品を6のグループに分類しそれぞれのグループを表1、2…6と呼ぶようにしています。また、ご飯茶わん半分と同じエネルギー(カロリー)量(80キロカロリー)を1単位と決めています。ですから、茶わん軽く1杯のご飯は表1の食品で2単位に相当し、同じ表1の食品2単位分例えば6枚切りの食パン1枚と交換することができます。
このようにして、食品交換表を見ると同じカロリー(同じ単位数)・同じ栄養価(同じ表)を持つ食品を簡単に探すことができます。例えば、1日に表1(穀物、いも類など)9単位、表2(くだもの)1単位、表3(魚介類、肉類、卵、チーズ、大豆類)4単位、表4(牛乳・乳製品)1.5単位、表5(油脂、脂身)2単位、表6(野菜、海藻、きのこ)1単位、この他調味料として0.5単位摂取すると、合計20単位つまり1600キロカロリーで栄養のバランス良く食べることができます(例2)。また、同じグループ(表)に入る食品を色々交換することで食品のバラエティを増やすことができます。
栄養のバランスの良い食事例
表1 | 表2 | 表3 | 表4 | 表5 | 表6 | 調味料 | 合計 | |
食品 | 穀類いも | くだもの | 魚肉卵チーズ大豆 | 牛乳乳製品 | 油脂脂身 | 野菜海藻きのこ | 味噌砂糖 | |
例1 | 6 | 1 | 4 | 1.5 | 1 | 1 | 0.5 | 15単位 |
例2 | 9 | 1 | 5 | 1.5 | 2 | 1 | 0.5 | 20単位 |
食事の配分方法
まとめ食いをするとその直後に血糖が上がりやすくなるので、食事は朝、昼、夕食の3回になるべく均等になるように取る方がよいでしょう。また、野菜などの副食から先に食べると食後の血糖上昇をある程度防ぐことができます。