更年期障害

閉経前後における女性ホルモン(エストロゲン)減少を主原因とする様々な症状を更年期障害と呼びます。全人口の約半数が罹患し得るこの障害に対する幅広い理解が必要と考えられます。

 更年期は一般的に閉経前後の各5年間計10年間を指すことが多いようですが、必ずしも時間にこだわるよりも各個人の病態に応じて認識した方が良いと考えられます。この時期では加齢に伴い急速に性腺機能が低下し、特に卵巣では卵胞発育・排卵・黄体形成の一連の機能が停止し、形態学的には委縮します。これに伴いエストロゲン分泌が低下し、様々な症状が出現します。なお、日本人の平均閉経年齢は50歳です。

1更年期障害の症状

1)月経異常:はじめ月経周期が短縮、その後月経周期が延長し月経回数が減少、最終的に閉経となる。この間に不正出血が出現することもある。

2)血管反応性の変化

ほてり、のぼせ(hot flush):更年期障害の代表的な症状。エストロゲン欠乏により脳の自律神経調節中枢の機能が変化するために生ずると考えられている。突然おこる熱感で身体から顔や手足へと広がり、発汗、動悸を伴うことが多い。通常5年程度で消失することが多い。

3)精神症状:エストロゲン低下による中枢神経系の機能変化、閉経による女性性の喪失感、子供の成長による母性性の喪失感、パートナーとの一体感の喪失などにより、不眠、うつ症状などが出現する。

4)泌尿生殖器症状:エストロゲン低下による膀胱および周辺の筋力低下にため、頻尿(排尿回数の増加)、尿失禁などが出現します。粘膜の委縮や分泌物の減少をきたす閉経後膣炎(老人性膣炎)により、膣前庭の灼熱感、掻痒感、乾燥感および性行痛が出現します。また、性欲も減退します。

5)その他:エストロゲン低下により骨粗鬆症高脂血症動脈硬化などが出現します。

2 更年期障害の診断

 上記の自覚症状のほか、血中のエストラジオール濃度、FSH(卵胞刺激ホルモン)濃度を参考にする。そのほか、血清脂質や骨粗鬆症に関する検査も必要となることがある。

3 更年期障害の治療

 更年期障害の多くはエストロゲン低下によるため、エストロゲン補充療法(女性ホルモン補充療法)が有効です。この他、精神症状には精神安定剤やわが国独自の漢方療法が用いられることもあります。

 徐々に低下する男性性腺機能とは対照的に女性の性腺機能は急速に低下するため、パートナーとの不一致も問題となりがちです。平均寿命の伸びにより、女性にとって閉経後の30年を如何に過ごすかは大きな課題となっています。現在まで、医師の多くは男性で占められており、産婦人科医ですら更年期障害を我慢すべきものと考える風潮が強かったようです。今後は、人口の約半数が経験しうる問題として、家族、家庭医、内科医、産婦人科医、精神科医、地域保健婦などを含め幅広く議論されるべき課題と考えます。
 


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