尿酸と痛風

 痛風はすでに紀元前から存在した古い病気ですが、わが国では昭和30年ころまでは大変珍しいものでした。しかし、その後の食生活の欧米化などのため、最近、急速に患者さんが増加してきています。また、明かな痛風の症状は認めないものの、健診などで血液中の尿酸の高値を指摘される患者さんも増えてきています。痛風とその原因物質である尿酸について復習しましょう。

痛風

   痛風は40-60歳の男性に多い病気ですが、最近は女性や若い方にも増えてきています。痛風は関節内に尿酸の結晶ができる病気ですが、症状の中心はこの尿酸結晶によって引き起こされる関節炎です。症状は急速に出現するため、しばしば痛風発作と呼ばれます。足の指の付け根、特に足の親指の付け根の関節におきやすく、風が吹いても痛いような激しい痛み、腫れ、発赤が出現します。様子を見ていると、通常2週間程度で自然に軽快します。血液中の尿酸が高い(高尿酸血症)患者さんにおきますが、進行した患者さん以外では、同時に二つ以上の関節がやられることはありません。アルコール摂取、肝、モツ類などの摂取、過労、激しい運動、ケガ、ストレスなどが発作の引き金になることがあります。進行すると、耳たぶ、肘、足の指などに尿酸のかたまりができ、痛風結節と呼ばれるしこりができることがあります。

尿酸
 
  尿酸は体の構成成分である核酸(遺伝子の本体)や、ATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれる細胞のエネルギー源物質が分解されてできるもので、体の廃棄物の一つです。血液中の尿酸の大部分が腎臓から尿中に排泄されるため、腎臓には身体中の尿酸が集まってきます。尿酸はあまり水に溶けず、特に、低温や酸性の条件では溶けにくく、結晶として析出してきます。痛風発作が足の指におきやすく、痛風結節も耳たぶにできやすいのは、これらの部位が低温であるためです。

痛風腎
 
  血液中の尿酸が高い状態(高尿酸血症と呼ばれます)を放置すると、尿酸の結晶が腎臓にたまり、腎臓の働きを障害することがあります。腎臓が障害を受けると、痛風腎と呼ばれ、進行すると、腎不全、尿毒症となり生命にかかわります。

尿路結石症
 
  尿酸の結晶(かたまり)が腎臓の出口や尿管の中にできると、尿路結石となります。この結石が動くときには激しい痛みが出現し、また、腎臓や尿管の粘膜を傷つけるため、出血を伴います。尿が酸性に傾くと尿酸結晶ができやすいことが知られています。

尿酸値上昇の原因
 
  血液中の尿酸が上昇するのは、体の中でできる尿酸の量が多すぎるか、腎臓から尿中にうまく尿酸が出て行かないかのどちらかが原因です。

1) 体内での尿酸の過剰産生
  肥満に伴う体の核酸の増加により、核酸の分解産物である尿酸がたくさん作られるようになります。また、過度の飲酒、過激な運動、ストレスなどはエネルギー源でありもうひとつの尿酸の素であるATPの消費・分解を促進させ、尿酸を増加させます。さらに、核酸を多く含む肝、モツ類、肉類などの食べすぎも体内での尿酸の産生を増加させます。また、果物に含まれる果糖も取りすぎるとATPの分解を促進させ、尿酸を上昇させることがあります。ただ、実際には、これらの原因が見当たらず、体質的に過剰に尿酸が作られる方が多いようです。なお、まれですが、癌細胞、白血病細胞などから核酸が漏れだし、尿酸値が上昇することもあります。

2) 尿への尿酸の排泄低下
  慢性腎炎や、糖尿病による腎障害などのため腎臓の機能が低下すると、尿酸がうまく排泄されなくなり高尿酸血症となります。このほか、体の水不足などによる尿量の減少、尿の酸性化によっても、尿酸の排泄が低下します。閉経後婦人で認められる女性ホルモンの低下も、尿酸の尿への排泄を減少させます。また、ある種の利尿降圧薬によって尿酸の排泄が低下することもあります。なお、尿酸の排泄低下にも体質の関与が大きいようです。

痛風・高尿酸血症の治療

  高尿酸血症を放置すると腎障害や尿路結石症の原因になりますので、痛風の症状がなくても治療が必要です。

1) 食事療法
  尿酸値が上昇する原因を取り除くため、まず、食事療法が必要です。カロリーの取り過ぎや肥満は体の中の核酸を増やすことになり、改める必要があります。実際、徐々に肥満を減らすだけで、尿酸値が低下することが証明されています。尿酸の原料である核酸を大量に含む肝やモツ類は避けた方がよいでしょう。このほかの食品はバランスよく適量摂取していただけば、何を召し上がっていただいても結構です。以前は、痛風患者は肉を食べてはいけない、ビールを飲んではいけないなどと考えられていたこともありましたが、このような極端な制限は必要ありません。例えば、一日に中瓶一本程度のビールは尿酸値をほとんど上昇させないことがわかっています。痛風発作中以外はこの程度までなら大丈夫です。海藻、牛乳、野菜などのアルカリ食品を十分にとり、尿が強い酸性にならないようにしてください。また、腎臓内や尿中の尿酸を薄めるため、水分を十分にとってください。
  激しい運動やストレスはATPの消費分解を促進させ、尿酸を上昇させますので注意してください。

2) 薬物療法
  食事療法だけで尿酸が8 mg/dl以下に下がらない場合、あるいは痛風発作を繰り返す場合には尿酸値を下げる薬物療法が必要です。尿酸を下げる薬には1)体のなかで尿酸が作られる量を減らす薬 (ザイロリックなど)、2)尿酸を腎臓から尿に出してしまう薬(ユリノームなど)の二種類があります。患者さんの尿酸値高値が、尿酸の産成過剰によるものか、あるいは尿中への排泄低下によるものかを見極めて、病状に応じた薬を選ぶ必要があります。尿中の尿酸を測ることでこの両者は簡単に区別できますので、薬の服用を開始する前には必ず尿の検査を受けてください。体のなかで尿酸が過剰に産成されている患者さんに、あやまって尿中への尿酸排泄を促進させる薬を投与すると、痛風腎や尿路結石症を誘発することがあり危険です。なお、尿酸値が下がりにくい患者さんでは、二種類の薬を併用して飲んでいただく場合もあります。また、尿が強い酸性である患者さんには尿を弱酸性 (pH6-6.5) に保つため、クエン酸などのアルカリ化薬品を服用していただくこともあります。
 
  痛風発作自体は痛み止めや湿布などで治療します。痛みなどの急性炎症症状がおさまってから尿酸を下げる治療を開始します。痛みがある間に尿酸を下げる薬を飲み始めると、逆に痛みが強くなることがあるのです。また、痛みがおさまってからでも、尿酸を下げる薬を急に大量に投与すると再び痛風発作を誘発することがあるので、必ず一日1錠の少量からはじめなければなりません。尿酸値の目標は4-6mg/dlですが、焦らずに徐々に下げて行くことが重要です。時に、痛みなどの痛風症状がおさまったからといって、その後来院されなくなる患者さんがおられますが、放置すると痛風の再発や腎障害、尿路結石症などを引き起こすことになります。痛みがおさまってからが痛風・高尿酸血症の本当の治療です。

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