血糖と血圧のコントロールで死亡率が低下  98年10月
 
  糖尿病患者さんのほとんどを占めるインスリン非依存糖尿病 (2型糖尿病) で、薬物療法による血糖のコントロールが本当に様々な合併症の発症を防ぐことができるかどうかについては、必ずしも明確ではありませんでした。このたび、20年ほど前から5000人以上の患者さんを対象に、イギリスで続けられている糖尿病の治療に関する研究結果が発表され、血糖コントロールにより確実に糖尿病性慢性合併症の発症を減少させることができると証明されました。(British Medical Journal、The Lancet  98年9月12日号)



  インスリン非依存糖尿病 (2型糖尿病) で、スルフォニル尿素薬やメトフォルミンなどの飲み薬、およびインスリンなどの薬物を使用して血糖を厳密にコントロールした場合、食事・運動療法のみで血糖コントロールが不十分な場合に比し、網膜症を25%、腎症を30%減少させることができました。また、これらのいずれの薬物も、血糖低下による合併症予防効果を持っており、低血糖など以外には特に問題となる副作用を持ち合わせていないことが証明されました。また、45歳の2型糖尿病患者の40%、75歳の患者の60%は高血圧を合併しますが、高血圧の治療によっても糖尿病性慢性合併症の発症を減らせること、また、さらに高血圧の治療によって脳卒中などによる糖尿病患者の死亡率を低下させることができることなども判明しました。降圧薬としては、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、ベータブロッカーとも同じように有効であることが分かりました。なお、肥満した患者さんでは血糖コントロール目的でメトフォルミンを使用した場合、その他の治療薬を使用した場合に比べ、合併症の発生や死亡率に対してより望ましい効果が得られる可能性が考えられました。

  1993年、インスリン依存糖尿病(1型糖尿病)で、厳格な血糖コントロールにより糖尿病性慢性合併症の発症を予防することができると証明され、インスリン非依存糖尿病(2型糖尿病)でも同様の効果が期待されていました。わが国で行われたKumamoto研究でも、2型糖尿病において、血糖コントロールにより合併症発症を予防できることが示されていましたが、このたび、より大規模な研究でその効果が証明されました。ただ、2型糖尿病患者さんに多く、その死亡原因として重要な脳卒中などの動脈硬化性心血管疾患の発症は血糖コントロールのみではほとんど抑制されず、これらの動脈硬化性合併症の予防ひいては2型糖尿病患者の死亡率低下のためには血圧の管理がより重要であることが示されました。

  なお、本年中にわが国の糖尿病診断基準が改められ、空腹時血糖は126 mg/dl以上の場合糖尿病と診断されることになります。
 

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