女性ホルモン補充療法で大腸癌が減少! (98年5月)

以前から女性ホルモン補充療法により大腸癌の頻度が低下するという報告はいくつかありましたが、今回、ハーバード大学のグループが59002人の女性看護婦を最長14年間追跡調査した結果をArchives of Internal Medicine 5月1日号に発表しましたので、お知らせします。



14年間に59002人のうち470人に大腸(結腸および直腸)癌が発生し、838人に大腸腺腫が発生しました。現在女性ホルモン補充療法を受けている対象者では、全くホルモン療法を受けたことがない対象者(全体の48.1%)に比し、大腸癌発生の危険率が65%に低下していました。また、以前に女性ホルモン補充療法を受け現在は受けていない対象者では危険率が84%に低下していました。ホルモン補充療法を中止して5年以上が経過すると危険率は92%となり、ホルモン療法の効果は消失していました。また、ホルモン補充療法を受けている対象者は1cm以上の大腸腺腫の発生も74%に低下していました。


以前からの報告とあわせて考えると、少なくとも米国女性では女性ホルモン補充療法により大腸癌の発生が低下することは間違いないようです。それにしても、全対象者のうちこのホルモン補充療法を一度も受けたことがない対象者が48.1%にすぎないことは、女性ホルモン補充療法が米国でいかに一般的に行われているかを物語っており大変興味深く思われます。
著者らは、女性ホルモンの大腸癌予防効果のメカニズムとして、肝臓・胆嚢から腸に分泌される胆汁の変化、腸内の細菌の変化、大腸粘膜細胞のDNAの変化の可能性などを挙げています。大腸癌発生防止のメカニズムが判明すれば、女性ホルモンを服用せずに大腸癌を予防する方法の開発にもつながるので、今後の研究の発展に期待が寄せられています。

 

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