降圧薬で癌が減少? (1998年8月)

 
 
  英国の研究者が過去の症例を分析した結果、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬という降圧薬を服用していた高血圧の患者さんでは癌の発生が少なかったことが分かりました。(英国の医学専門誌The Lancet 98年7月18日号)。


   1980年から1995年までに高血圧で受診した5200人を調査しました。このうち、1559人がアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を、1416人がカルシウム拮抗薬(カルシウムチャンネルブロッカー)を、2099人が利尿薬を、2681人がベータ遮断薬を服用していました(重複あり)。他の薬物を服用していた患者に比し、ACE阻害薬を服用していた患者さんでは、癌の総発生率が72%に低下していました。また、特に、致死的な癌の発生率は65%にまで低下していました。また、この傾向は女性で強く、癌の総発生率は63%に、致死的な癌の発生率は48%に低下していました。


   今回の結果は、ACE阻害薬により癌発生が減少する可能性を示唆しています。しかし、この研究は症例のデータをあとから解析したもので、いわゆる「後ろ向き研究」と呼ばれるものです。このような場合、各主治医がどのような基準で薬物を選択し投与したかが不明確であるため、認められた癌発生率の差が本当に薬物によるものかどうかはっきりしません。薬物の効果をはっきりさせるためには、多数の症例を無作為に各薬物に割りつけて、数年間追跡調査をする必要があります。

 

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