脳卒中の予防 (1999年4月)

米国脳卒中学会が発表した脳卒中予防のためのガイドラインをご紹介します。脳卒中は高血圧、心筋梗塞、心房細動、糖尿病、高脂血症、喫煙、アルコール多飲などの様々な原因をもとに発症する病気ですが、このガイドラインではそれぞれの原因に対し、どのように対応するべきかが示されています。(Journal of American Medical Association, March 24/31, 1999)

1高血圧
高血圧を原因とする脳卒中発症を予防するために、以下の3点が重要である。
1)高血圧患者は十分に血圧の治療を受けるべきである。
2)クリニックで医師はすべての患者につき、受診のたびごとに血圧を測定するべきである。
3)高血圧患者は自宅で血圧を測定するべきである。

2心筋梗塞
心筋梗塞発症後(特に最初の1年間)の患者においては脳梗塞の発症率が高いので、アスピリンまたは血液凝固阻害薬(心房細動や心機能低下を認める場合)の投与、およびスタチン系高コレステロール血症治療薬の投与で、脳卒中を予防するべきである。

3心房細動
心房細動は脳卒中発症の危険性を約6倍増加させる。心房細動を有する75歳以上の症例や75歳以下でも、心機能低下などの危険因子を有する患者はワーファリンを服用すべきである。65歳以下の患者で心房細動以外の危険因子を有しない患者はアスピリンを服用すべきである。

4糖尿病
糖尿病の患者では脳卒中の発症頻度が高いことが知られているが、血糖をコントロールすることで脳卒中が予防できるかどうかは不明である。なお、糖尿病患者では、血圧を厳格にコントロール(130/85 mmHg未満)することで脳卒中の予防が可能である。

5頸動脈狭窄
総頸動脈の60%以上の高度狭窄症例(日本ではまれ)は内膜除去術を受けた方がよい。

6生活習慣
1)喫煙はその程度(喫煙本数)がますほど、脳卒中の発症頻度が増加する。喫煙中止後2-5年後には、脳卒中の頻度は非喫煙者と同等まで低下する。
2)少量の飲酒は脳卒中発症を減少させる可能性があるが、大量の飲酒は脳卒中を増加させる。
3)運動
歩行などのごく軽い運動も脳卒中の頻度を低下させる。30分以上の速歩を1週間に4日以上行うことが望ましい。
4)食事
食事の注意で脳卒中を減らすことができるかどうかは不明であるが、脂肪摂取の制限、塩分制限、ビタミンの適切な摂取、野菜や果物の摂取が勧められる。

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