高血圧の新しい食事療法? 97年5月

高血圧の予防・治療には食塩摂取の制限、アルコールの制限、および肥満の是正が有効であることはよく知られています。ではそれ以外の食品はどうでしょうか? 米国の医学専門誌 New England Journal of Medicine の4月17日号にその他の食品の効果に関する論文が掲載されましたのでご紹介します。


Johns Hopkins大学、Harvard大学、Duke大学など複数の施設が参加したこの研究では、459人の成人を対象に実験を行いました。当初、対象者全員が3週間の間”通常の食事(果物、野菜、乳製品が少なく、比較的脂肪の多い米国の一般的な食品)”を摂取し、その後、無作為に1)そのまま”通常の食事”を摂取する群、2)果物、野菜を多く摂取する群、3)果物、野菜に加えて、低脂肪乳製品を多く摂取し、更に飽和脂肪酸および全脂肪の摂取量を制限する群の3群に分けられ、8週間の間これらの食品を摂取しました。その結果、第2群の果物、野菜を多く摂取した群、および第3群の果物、野菜の他、低脂肪乳製品を多く摂取し、更に飽和脂肪酸および全脂肪の摂取量を制限した群では、2週間後から血圧が低下し、この血圧低下作用はその後実験期間が終了するまで持続しました。血圧の低下は、第2群で収縮期が2.8 mmHg、拡張期が1.1 mmHgの低下、第3群では更に効果が大きくそれぞれ5.5 mmHgおよび3.0 mmHg低下しました。なお、これら3群とも塩分、アルコールなどの摂取量には差がありませんでした。 (A clinical trial of the effects of dietary patterns on blodd pressure. LJ Appel et al. New England Journal of Medicine 336:1117-24, 1997.)


この研究は食品が血圧に及ぼす短期的な効果を検討したものですが、現在までに知られている塩分やアルコールの制限に加えて、果物・野菜および低脂肪乳製品を多く摂取し飽和脂肪酸および全脂肪摂取量を制限する食事療法が有効である可能性を示したものであり、注目に値するものと考えられます。今後は、長期効果の確認のほか、肉と魚の比較などについても研究が発展することが期待されます。また、わが国においてもこのような研究が行なわれることが望まれます。

先月までのトピックス 成人病教室

健康倶楽部