中性脂肪と動脈硬化の関係 (97年6月)

中性脂肪が動脈硬化を促進させるかどうかについては、不明の点が少なくありません。この点について最近の知見をコロンビア大学のGinsberg博士が整理していますのでご紹介します。(Annals of Internal Medicine, 1 June 1997. 126:912-4)


動脈壁に直接沈着し、動脈硬化を引き起こすのは、コレステロールであり中性脂肪ではありません。しかしながら、中性脂肪がコレステロールの沈着に対して影響を及ぼす可能性は否定できません。中性脂肪と動脈硬化の関係を明らかにするにあたっては、1)中性脂肪とHDLコレステロールの関係、2)食後の中性脂肪上昇が動脈硬化に及ぼす影響、3)血液中の中性脂肪の存在様式の差による動脈硬化促進効果の相違の3点について考える必要があります。

HDLコレステロールは一般に動脈硬化を防止する働きを持っていると考えられています。通常、血液中の中性脂肪の値はHDLコレステロール値と反比例します。したがって、中性脂肪が高い人はHDLコレステロールが低く、そのため動脈硬化が促進される可能性が考えられます。

血液中の脂質と動脈硬化の関係を調べた現在までのほとんど全ての研究は、朝食前の血液中の脂質濃度に関するものでした。しかし、中性脂肪は食事による変動が大きく、食後にはかなりの高値になっている方もおられ、この食後の高中性脂肪血症が動脈硬化にどの様に関係しているかにつき検討が必要です。

血液中の中性脂肪は様々な存在様式を取っており、この存在様式の違いにより動脈硬化を引き起こす作用に相違がある可能性が考えられます。

このような問題点が解決されれば、中性脂肪と動脈硬化の関係がより明らかになると考えられます。では、それまでの間どの様なことに注意すべきなのでしょうか? 血液中の脂質と動脈硬化の関係で最も重要なのは血液中のLDLコレステロールです。したがって、LDLコレステロールが高値の方は、まずこれを低下させる必要があります。LDLコレステロールが高くない方では、LDLコレステロールとHDLコレステロールの比が5以下になり、また、中性脂肪が 200 mg/dl 以下になるようにした方がよいのではないでしょうか? この件に関しては現在大規模な研究が行なわれていますので、まもなく明確な回答が得られることと考えられます。


先月までのトピックス 成人病(生活習慣病)教室

健康倶楽部