閉経後女性ホルモン補充療法による死亡率の低下 1997年7月
 
閉経後女性ホルモン補充療法は「両刃の剣」的な性格を持ち、骨粗鬆症や心血管疾患を減少させますが、逆に乳癌の発生を増加させます。では、女性ホルモン補充療法は最終的に女性の死亡率に対してどの程度の影響を及ぼすのでしょうか?この問題に関し、米国の多数の女性看護婦が参加した研究結果が報告されましたので、ご紹介します。Grodstein, F. et al., New England Journal of Medicine, June 19, 1997. 336: 1769-75. (http://www.nejm.org/public/1997/0336/0025/1769/1.htm)


1976年から1994年まで多数の米国看護婦を追跡調査した結果、この間に3637人が死亡しました。全対象者で解析すると、女性ホルモン補充療法を受けていた対象者は全く補充療法を受けていなかった対照に比し死亡率が63%に低下していました。しかしながら、逆に10年以上の長期間女性ホルモン補充療法を受けていた対象者は、死亡率は対照の80%で死亡率の低下は軽度にとどまりました。これは乳癌死の増加によるものでした。高脂血症や高血圧症などの冠状動脈疾患の危険因子を有する対象者では、女性ホルモン補充療法をうけると死亡率は半減(51%)しましたが、これらの危険因子を有しない対象者では女性ホルモン補充療法を受けても死亡率は89%でその低下はわずかでした。これらをまとめると、女性ホルモン補充療法を受けている女性は一般的に死亡率が低下するが、長期間女性ホルモン補充療法を続けるとそのメリットは減少する。また、冠状動脈疾患の危険因子を有しない女性ではメリットは少ないということになります。


わが国では、女性における心血管疾患による死亡および乳癌死とも米国に比し低率であり、上記の米国女性での研究結果がどの程度適合するかは不明です。また、家族歴(血縁者に乳癌患者がいるかどうか)などの乳癌の危険因子の有無による相違についても今後検討されるべきと考えられます。
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