高血圧の治療指針
 
  1997年11月24日号のアメリカの医学学術誌 Archives of Internal Medicine に、米国高血圧診療合同委員会の第6次治療指針が発表されましたのでご紹介します。4年ぶりの改訂です。今回の改訂では、患者さんの心血管疾患に関するリスク状態別(危険度別)に治療指針が作成されたことが特徴です。また、家庭血圧の測定および24時間血圧測定についてもコメントがあり、一応、家庭や職場では135/85mmHg以上の場合高血圧、睡眠中の血圧は120/75以上の場合高血圧とされています。
  なお、以下の「血圧値の分類」や「治療目標」はすべて医療機関で測定される血圧値に関するものです

1 血圧値の分類
分類 収縮期血圧 拡張期血圧
至適(理想) 120 mmHg未満 かつ 80 mmHg未満
正常 130 mmHg未満 かつ 85 mmHg未満
正常高値 130-139 mmHgまたは 85-89 mmHg
高血圧 ステージ1 140-159 mmHgまたは 90-99 mmHg
高血圧 ステージ2 160-179 mmHgまたは 100-109 mmHg
高血圧 ステージ3 180 mmHg以上 または 110 mmHg以上
正常高値以上の分類では、収縮期血圧(最大血圧)と拡張期血圧(最小血圧)のグループが異なる場合、高値のグループとして分類します(例 168/94 mmHgの場合、高血圧ステージ2となる)。

2 高血圧以外の心血管疾患のリスクファクター(危険因子) : 心筋梗塞・狭心症を引き起こす高血圧以外の原因です。

3 高血圧治療の目標
高血圧治療の目標は血圧を140/90mmHg未満(正常高値以下)に維持することですが、糖尿病を合併する高血圧症の患者さんでは血圧治療の目標は130/85mmHg未満(正常以下)となります。

4 ライフスタイル(生活習慣)の改善: 高血圧症の患者さん全員に必要です。

5 治療指針
血圧値 リスクA: 
他のリスクなし  かつ 
心血管疾患・臓器障害ともなし
リスクB: 
糖尿病以外のリスクあり  しかし 
心血管疾患・臓器障害ともなし
リスクC: 
糖尿病あり  または 
心血管疾患・臓器障害いずれかあり
130-139/85-89 mmHg 
(正常高値)
ライフスタイル改善 ライフスタイル改善 服薬開始(糖尿病/心不全/腎障害)
140-159/90-99 mmHg 
(高血圧 ステージ1)
ライフスタイル改善(1年間まで) 
→改善しなければ服薬開始
ライフスタイル改善(6ヶ月間まで) 
2ヶ以上のリスクを認める場合は当初から服薬開始
服薬開始
160以上/100以上 mmHg 
(高血圧 ステージ2, 3)
服薬開始 服薬開始 服薬開始
血圧は2回以上受診した平均値。当初から薬物療法を開始した場合も、ライフスタイル改善をあわせて行う。
すでに狭心症、心筋梗塞や脳卒中の既往がある患者さん、心肥大、眼底の異常、動脈硬化を認める患者さんおよび糖尿病を合併している患者さんはリスクC(高い危険度)に分類されます。 糖尿病以外のリスクファクター(危険因子 上記2)を認める患者さんはリスクB(中程度の危険度)に分類されます。