糖尿病症例におけるコレステロール低下薬の有用性

 1997年4月

 糖尿病(特にインスリン非依存型糖尿病)症例では、狭心症・心筋梗塞などの冠状動脈疾患の発生が非糖尿病者に比べ、2−4倍の高率です。これらの糖尿病症例では、血液中の中性脂肪が高く、また、HDLコレステロールが低下していることが多いようです。一方、総コレステロールやLDLコレステロールには通常著明な異常を認めません。

 現在までに、糖尿病でない対象者で、スタチン系の薬剤を服用し総コレステロールあるいはLDLコレステロールを低下させると冠状動脈疾患の発生が減少することがわかっています。しかし、糖尿病での研究はほとんどありませんでした。今回、糖尿病症例でコレステロールを低下させると冠状動脈疾患の発生が激減するという研究結果が米国糖尿病学会の機関誌の一つであるDabetes Care 97年4月号で報告されたのでご紹介します。(Pyorala et al. Diabetes Care 20:469, 1997)


 北欧5カ国の共同研究ですが、冠状動脈疾患の既往を有する202人の糖尿病症例を無作為に二分し、一方のグループの患者さんにはスタチン系コレステロール低下剤シンバスタチンを投与し、もう一方のグループの患者さんには投与せず、平均5.4年間経過を観察しました。その結果、薬剤を服用したグループでは狭心症・心筋梗塞などの冠状動脈疾患の発生が服薬しなかったグループの約二分の一に低下しました。この低下率(約50%)は、非糖尿病症例で同様の治療をした場合の低下率約30%より大きかったことから、非糖尿病者に比べ糖尿病症例でより服薬のメリットがある可能性が考えられました。また、糖尿病症例でもあるいは非糖尿病者でも服薬のメリットは治療開始時の総あるいはLDLコレステロールの値とは関係がなく、それほどコレステロールが高くなくとも服薬のメリットが十分あると考えられました。


 少なくとも狭心症や心筋梗塞の既往があるインスリン非依存型糖尿病の患者さんは、総コレステロールあるいはLDLコレステロールがそれほど高くなくてもスタチン系コレステロール低下薬を服用した方が良いと考えられます。

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