ビタミンEなどを豊富に含む食品を多く摂取すると、心筋梗塞や脳梗塞などの発症が減少することはよく知られています。ただ、これらの現象がビタミンE自体によるものか、ビタミンEとその他の栄養素やライフスタイルとの相互作用の結果であるのかはわかりません。そこで、ビタミンE自体を薬として投与した場合に、疾病の発生率がどのように変化するかを調べる必要があります。今回、このような研究がNew England Journal of Medicine 1月20日号に掲載されましたので、ご紹介します。
ビタミンEは抗酸化物質であり、LDLの酸化を防ぎ、動脈硬化予防作用があるのではないかと期待されていますが、この研究ではそのような効果は認められませんでした。ビタミンEの効果発現にはより長期の時間が必要である可能性も考えられ、また、抗酸化作用による発がん予防作用も考えられるため、この研究はこれらの点に関しさらに検討を続けているとのことです。なお、今までにもビタミンEを薬として投与した研究はいくつかあり、有効、無効と研究結果は一定していません。今回の研究成果を合わせて考えると、少なくとも、ビタミンE自体が極めて有効であるとは考えにくいと思われます。
また、同一の対象者において、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)ramiprilの効果を検討した結果、ramiprilが主要転帰、副次的転帰のいずれに対しても約20%の発生防止効果を示したことも報告されています。この薬は高血圧症の治療薬ですが、今回の研究の対象者には高血圧でない人も多く含まれており、また、実際に血圧は平均2mmHgしか低下しなかったこともあり、今回認められたramiprilの効果は降圧の結果もたらされたものではないと考えられるとのことです。また、同じ研究で対象者を糖尿病患者に限定した解析も行われていますが、やはりramiprilは主要および副次的転帰に対して約25%の防止効果を示したとのことです。なお、類似の薬物はわが国でも使用されています。この研究に日本人の対象者は含まれていませんが、大いに参考にすべきデータであると考えられます。