長続きする合併症予防効果:糖尿病コントロールの重要性 (2003年11月)

 

糖尿病において、血糖コントロールが良ければ良いほど、網膜障害、腎障害、神経障害などの細小血管障害の発生が予防できることが知られています。今回、その予防効果が少なくとも8年間にわたり持続することが報告されました。(JAMA2003年10月22/29日号)

この研究は米国およびカナダの1型糖尿病患者約1500人を対象として“頻回のインスリン注射による厳密な血糖コントロール(強化インスリン療法)”と1日2回程度のインスリン注射による“いいかげん療法”が、平均6.5年間の追跡期間中に合併症の発生に対してどのような差をもたらすかを追跡調査した有名なDCCTという臨床研究の事後追跡調査として行われたものです。

当初のDCCTの調査対象となった1型糖尿病患者の96%の患者さんが無償で追跡調査に協力しました。追跡調査開始時は“強化療法群”のHbA1cは7.4%、“いい加減療法群”のそれは9.1%でした。しかし、残念ながら、その後、徐々にこの差は縮まり8年間の追跡調査中の平均値はそれぞれ8.0%と8.2%とほぼ同程度のコントロール状態でした。ただ、当初のDCCT研究で“強化インスリン療法”を受けコントロールがはじめ7.4%であったグループでは、その後、早期腎障害は6.8%に発生したにすぎませんでしたが、当初のコントロールが9.1%と悪かった“いいかげん療法”グループ”では早期腎障害が15.8%に出現しました。また、明らかな腎障害の発生もそれぞれ1.4%と9.4%と著明な差が認められました。さらに、高血圧の発症もそれぞれ29.9%と40.3%と明らかな差が認められました。

今回の追跡調査の結果、当初の良好な血糖コントロールの合併症予防効果が、その後も少なくとも8年間にわたり持続することが示されました。現在、わが国では1型糖尿病患者さんは全員頻回インスリン注射による強化療法をうけておられるはずです。この治療法がいかに優れているかが再確認された研究です。

 

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