抗酸化ビタミン(ビタミンE・ベータカロチン)は無効(2003年7月)

 

悪玉コレステロールとよばれるLDLコレステロールは、実際には、そのままの形ではなく、酸化されてはじめて動脈壁に蓄積されると考えられています(酸化LDL仮説)。したがって、このLDLコレステロールの酸化を防ぐことができれば、動脈硬化を防ぐことができるのではないかと想定され、抗酸化作用(酸化防止作用)を持つビタミンの動脈硬化予防効果が調べられてきました。世界中でもっとも権威のある医学専門誌のひとつThe Lancetに、現在までに報告された抗酸化ビタミン(ベータカロチンとビタミンE)の動脈硬化予防効果に関する大規模研究の結果をまとめて解析した結果が掲載されました。(The Lancet 2003/6/14)

 抗酸化ビタミンのひとつであるベータカロチンに関しては、1000人以上の人を対象とした大規模研究が世界中で8個行われました。全対象者は何と138000人にのぼりました。同じく抗酸化ビタミンであるビタミンEに関しても、同様な大規模研究が7個行われ、総数82000人が研究対象となりました。研究期間は1.4〜12年間でした。研究方法としては、対象者を無作為に2分し、半数に抗酸化ビタミンを投与し、残りの半数には何も投与せず、心筋梗塞、脳梗塞などの脳卒中、およびその他の疾患の発生状況を調査したものです。

結論として、ビタミンEの服用では総死亡率に変化はなく、心筋梗塞死や脳卒中発生率にも影響がなかった、言い換えると何の効果もなかったということです。一方、ベータカロチンの服用では、総死亡率および心筋梗塞による死亡率が、わずかながら、はっきりと増加したとのことです。

 期待した結果が得られないことはよくあることです。この場合、期待自体が間違っていた可能性も考えなくてはならないでしょう。酸化LDL仮説自体の重要性にも疑問符が必要かもしれませんね。蛇足ですが、「喫煙者はベータカロチンを服用しないこと」を動脈硬化・癌予防ガイドラインの中に明記している国もあります。

 

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