高血圧治療薬の選択 (2003年2月)

 

高血圧の最終的な治療目的は、高血圧によって引き起こされる心筋梗塞、脳卒中などの疾患を予防することです。言いかえると、高血圧の治療により血圧が低下しても、これらの疾患が十分に予防されなければ治療の意味がないことになってしまいます。降圧薬にはさまざまな種類があり、いずれも降圧作用自体は満足すべきものです。では、さまざまな降圧薬には心筋梗塞や脳卒中の予防効果に差があるものでしょうか?

 

この問いに答えるため、米国国立心臓肺血液研究所が研究を行いました。55歳以上で、喫煙、糖尿病、心肥大、低HDL(善玉)コレステロールなど、心血管疾患発症のリスクが高い約42400人の国民を対象に、3種類の高血圧治療薬の心筋梗塞や脳梗塞予防効果に差があるかどうかが調べられました。1994年から開始され、2002年まで最長8年間(平均4.9年間)追跡調査が行われました。患者さんは開業医や一般病院に通院し、3種類の降圧薬(利尿薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬)の一つが無作為に割り当てられました。その結果、心筋梗塞発生率や総死亡率には3種の薬物間で差が認められなかったけれど、脳卒中(多くは脳梗塞)の発症はアンギオテンシン変換酵素阻害薬で治療されたグループにわずかに多く、心不全はアンギオテンシン変換酵素阻害薬群およびカルシウム拮抗薬群でわずかに多かったとのことです。これらの結果から、研究グループは利尿薬を中心にした治療を推奨しています。(米国医師会医学雑誌2002年12月18日号)

 

利尿薬は薬価も安く、わが国でも、今後処方が増加するかもしれません。しかし、利尿薬には血糖値や尿酸値を上昇させる副作用があるため、一人一人の患者さんの病状によって、いろいろな降圧薬を使い分ける必要があると考えられます。


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