ホモシステインと痴呆の関係 2002年3月)

 

ホモシステインという物質は、メチオニンというアミノ酸が体内で変化して作られるアミノ酸です。このホモシステインは葉酸やビタミンB12の働きで、体内で、再びメチオニンに戻ったり、ビタミンB6の働きでシステインという類似のアミノ酸に変換されたりして処理されます。最近、主に欧米の研究により、このホモシステインが体内に蓄積すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞になりやすくなることが分かってきました。今回、ホモシステインの蓄積によりアルツハイマー病などの痴呆症の発症も増加することが判明しました。 (New England Journal of Medicine 2002/2/14)

 

対象は平均年齢76歳の米国人1092人です。1986年から1990年の間に、対象者の血液中のホモシステイン量が測定されました。その後、平均8年間の間に111人が痴呆を発症しました。このうち83人はアルツハイマー病と診断されました。その他の症例は脳血管性痴呆などと診断されました。これらの痴呆症は、当初測定した血液中のホモシステイン量が多いほど、発症率が高くなることが判明しました。たとえばホモシステイン量が多い順に対象者を4つのグループに分類すると、最上位のグループでは、痴呆症の発症が他のグループの1.9倍に増加するとのことです。このホモシステインの影響は、対象者の年齢、性別、肥満度、血圧、学歴、喫煙、糖尿病、アルコール摂取量など痴呆症の発症に関係があると考えられる様々な要素とは無関係であったとのことです。

 

ホモシステインの蓄積がどのようにして動脈硬化や痴呆症の発症を促進するかはよく分かっていませんが、血管壁や神経細胞に対する有害作用が考えられています。一方、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6の投与により、体内のホモシステインが減少することがわかっています。したがって、これらのビタミンの投与により心筋梗塞などの動脈硬化症が減少する可能性が考えられ、実際にこれらのビタミンに動脈硬化の予防効果が認められるというデータも発表されつつある現状です。今後、痴呆症の発症予防に関しても、これらのビタミン投与の有効性が検討されることと思います。今後、しばらく、ホモシステインとビタミン投与によるホモシステイン低下療法の効果に関する研究に目が離せない状況が続くと考えられます。なお、現時点では、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6投与の有効性が確立されているわけではありませんので、ご注意ください。

 

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