果物・野菜摂取のすすめ (2002年6月)

 

 

果物や野菜を多く摂取することで、癌や心筋梗塞などの心臓病を減らすことができるのは良く知られています。これらの食物にはβカロチンやビタミンCなどの抗酸化物質が多く含まれていることから、これらの抗酸化物質が癌や心臓病の発症を減らす作用を持っているという可能性が考えられていました。しかし、実際に、これらの抗酸化物質のサプリメントを服用しても、期待した効果は得られないようだという報告が相次いでいます。したがって、現在では、果物や野菜摂取の効果はこれらの抗酸化物質とは異なるメカニズムで発揮されているのかもしれないと考えられています。今回、イギリスで看護師による果物や野菜摂取の指導が血圧や血液中の抗酸化物質の濃度にどのような影響があるかが研究されました。Lancet359: 1969-74, 2002.

 

研究は、ロンドンとオックスフォードの間にあるテームという人口約10000人の町で、開業医に通院中の25-64歳の対象者690人について行われました。対象者は研究開始時とその6ヶ月後に、血圧測定や採血などの検査を受けました。研究開始時には対象者をコンピュータで無作為に2分し、片方のグループは、看護師から平均25分間の間、果物や野菜摂取に関して指導を受け、パンフレットをもらいました。また、このグループは2週間後に看護師から電話での指導も受け、さらに、3ヵ月後には郵便物による再指導を受けました。もうひとつのグループは全く指導を受けませんでした。研究開始から6ヵ月後には、指導を受けたグループの方が実際に血液中の抗酸化物質が若干増えており、血圧も4mmHg低くなっていました。

 

この研究は人口10000人という小さな町で行われたものであり、看護師や郵便物による指導という比較的簡単な指導が少なくとも6ヶ月間は十分な効果をもたらすことを示しています。血圧が4mmHg低下するという効果は小さなものに見えるかもしれませんが、薬物によらず、これほどの効果が得られるとしたら、十分に意義のあるものと考えられます。血圧の低下は心臓病の発症を確実に減らす効果がありますので、これらの食品の摂取による心臓病の減少には血圧の低下が関係している可能性が考えられます。わが国でも職場健診や住民健診が行われており、その結果により生活習慣の指導や薬物などによる治療が行われています。今回の研究は、このような地域における保健システムが実際に有効であることを示した貴重な研究であると考えられます。現在行われている保健システムの更なる充実が望まれます。

 

 

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