高齢者での低コレステロールの危険性 (2001年8月)

65歳までの対象者では、血液中の総コレステロールの上昇とともに、心筋梗塞などの心疾患による死亡の増加が原因して、総死亡率が上昇することが知られています。しかし、70歳以上の高齢者では、この関係は明らかではありません。今回、ハワイ大学などの研究者が71歳以上のハワイ在住高齢日系人を対象に調査した結果、これらの高齢者では総コレステロールが低くすぎると総死亡率が高くなることが判明しました。 The Lancet, 4 August 2001

1991年から93年の間に、当時71〜93歳であった日系人男性3741人を対象に血液検査などを行い、その後、96年末までの死亡率を調査しました。総コレステロールの低い順に対象者を4等分すると、それぞれの平均総コレステロールはグループ1で149、2で178、3で199、4で232mg/dlでした。また、それぞれのグループのHDLコレステロール(善玉コレステロール)はグループ1で47、2で51、3で52、4で54mg/dlでした。死亡率は総コレステロールの一番低いグループを1とした場合、総コレステロールの上昇に伴い、グループ2で0.72、3で0.60、4で0.65となっていました。また、これらの対象者は約20年前である1971年から74年の間にも血液検査を受けており、20年前と今回(91〜93年)のいずれの採血でも総コレステロールが最低であったグループで死亡率が最高であったとのことです。低コレステロール血症は虚弱な対象者や慢性感染症の症例に認められることが多く、低コレステロール血症に伴う死亡率の増加がこれらの異常によるものである可能性は以前にも指摘されていました。しかし、今回の研究ではこれら虚弱者や慢性感染症の可能性を検討した結果、低コレステロール血症に伴う死亡率の上昇はこれらの異常によるものとは考えにくいとのことです。

今回の研究結果は、今までに発表されていた若、中年者での総コレステロールの上昇とともに死亡率が増加するという結果とは異なるものでした。高コレステロール血症の影響を受けやすい対象者は75歳に至る前に死亡してしまい、その後も生存している対象者は高コレステロール血症の悪影響を受けにくいある意味で特殊な体質をもっているのではないかなどと、著者らは推測しています。
今回の調査では、70歳以上では総コレステロール200前後の対象者が最も死亡率が低いことがわかりました。しかし、高齢者において、薬物療法などによって、積極的に総コレステロールをこの値に維持することが良いかどうかはいまだ明らかではありません。ただ、少なくとも、70歳以上の高齢者に対して、総コレステロールを180ないし200以下に下げるような積極的な手段(食事療法や薬物療法など)は取らないほうがよいと考えられます。

先月までのトピックス

成人病教室

健康倶楽部ホームページ